帰宅部にお任せを
お互いの近況報告をした。
椎奈には、彼氏が出来たらしい。
わたし達と離れて寂しい思いをしていないかな、と本当は少し心配していたから少し安心した。
その彼氏さんと椎奈の幸せが長く、長く続いてくれることを祈った。
「いつかわたしや、お父さんやお母さんに顔見せに来なさいよ。…あ、これ楓君にも良かったら伝えて?」
"良かったら"
どこか遠慮がちな彼女の言葉で、電話は終わった。
そうだね。
楓と二人でまた、あそこへ帰ってみるのもいいのかも知れない。
その時はまっさらな心を持って皆に会いたい。
―…ねえ、楓?
一人では食べきれなかった夕食。
少し作りすぎちゃった。
お隣さんがいるのかすらわからない、このマンション。
それだからご近所さんにお裾分け、なんてことも出来ないまま、わたしはそれらを一つ一つラップに包み、冷蔵庫にしまった―…。