風が吹く街
「だったらそばにいればいいだろ!」

顔をあげるとそこにはあいつがいた。
とっさに逃げようとしたが、
腕をつかんで引き寄せられ、
そっと抱き締めてきた。
抵抗しても力の差は明確で、身動きひとつとれなかった。

「何でなにも言わずにいなくなるんだよ」

声が少し震えているような気がした。

「ごめん」

涙が止まらなくて、私はそれしか口に出すことができなかった。

「どれだけ心配したか、どれだけお前を探したか、分かってんのかよ!」

その声は怒っていた。本気で心配してくれてたことが、痛いほど伝わってくる。

「ごめん」

「やっと見つけたと思ったら何でまた居なくなろうとするんだよ!」

「ごめん」

涙が止まらない。

「謝ってるだけじゃわかんないよ。何があったか説明してみろ。何もなかったらお前がこんなことするはずない!」

あんなに酷いことしたのに、あなたはまだ私を信じてくれるの?
祥の目は真剣だった。
真正面から私と向き合おうとしてくれてる。
私は祥なら全てを受け入れてくれるってそう思えた。

私は深呼吸して、ちゃんと理由を話した。
お父さんが死んだこと、私がお母さんを守ると決めたこと。
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