風が吹く街
父はみるみる弱っていった。
そんな父を見るのは辛くて、
私はあまりお見舞いにもいけなかった。
父はみんなに看取られながら静かに息をひきとった。
父の顔は幸せそうだった。
母は泣き崩れていた。
最愛の人がなくなるというのは相当辛いだろう。
でも母が泣いたのはその日だけで、私たちに涙ひとつ見せなかった。

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一週間がたち、母は突然この街を出ていこうと言い出した。
理由は聞かなくてもわかった。
父との思い出溢れるこの街は、母にとって何よりも辛い場所なはずだから。
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