secret name ~猫と私~
佳乃はある噂を思い出す。

“猫”と呼ばれる、仕事のプロ集団が居るという、噂。
耳にした時はよくある都市伝説だと思っていたが・・・まさか。

「知っているだろうけど、僕は機械に嫌われててね。ああしていつも彼女がサポートしてくれてるんだ。」

「私には必要ないと思いますが・・・」

自分は機械が得意と言うわけでもないが、苦手ではない。
しかし、社長の機械オンチは有名で、毎日何かを壊しているという証言まである。
触ったもののほとんどを壊して歩いているのではと、会社の中で知らない者はいない。

「いや、猫もたくさんいてね。飼い主の面接もあるんだけど、受けてみないかな?」

人間を“飼う”という表現が、まるで人権を無視しているようで少し嫌だったが、とりあえず返事をする。

「面接、ですか?」

「うん。費用は全面的に僕が持つよ。君は会社にとって大切な人材だ。倒れられる前に、適切なサポートを受けてほしい。」

真剣な目だった。
いつもの笑顔ではなく、射抜くような。
有無を言わさない、そんな雰囲気である。

「わかり・・・ました・・・」

佳乃の返事に、社長はいつもの笑顔に戻った。

< 10 / 259 >

この作品をシェア

pagetop