secret name ~猫と私~

翌日。

また社長室に呼ばれた佳乃は、そのまま面接を受けるように言われた。

面接など、いつぶりだろう。
一体どんな面接をするのだろうか?
“飼う”と言うぐらいだから、年収なども聞かれるのか?しかし、社長が費用を負担すると言ってくれたのだから、その点心配は無いのだが。

社長室の応接セットに座らされる。
社長秘書ならばお茶ぐらいでてきそうなものだが、部屋の隅の女性は、そうではないらしい。挨拶も無ければ、お茶も出ない。
誰にも気づかれないぐらいひっそりと、今日はタブレット端末を解体していじっている。
人形のように整った顔に表情はなく、染めの無さそうな色素の薄い短い髪が、時折小さく揺れるだけ。

(変な子。)

あんな女性が派遣されてきても、正直困るなと思った時。

社長室のドアがノックされ、社長が見慣れないスーツの男性を2人、伴って入ってきた。
思わず立って一礼すると、テーブルを挟んで、男性2人と向かい合う。
きっと、この2人が面接官なのだろう。

「水口、彼女だ。」

「貴女が高村君か。よろしく。」

「高村佳乃と申します。」

つい癖で名刺を2人に出せば、相手も名刺を渡してきた。

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