secret name ~猫と私~
「あの・・・」

セッテが困ったような表情になってようやく、彼女は我に返る。

「ご、ごめん、あまりにイケメンだったから、つい・・・」

正直すぎる香里に溜め息を吐きながら、佳乃は彼女に向き直る。
容姿を誉められる事には慣れているのか、嫌な顔はしていないので安心した。

「香里、今日は直帰なの?」

「ああ、うん!
佳乃見つけたから、飲みに誘おうと思ったんだけど・・・お邪魔みたいだから、良いわ!」

佳乃とセッテは、香里の発言に思わず顔を見合わせた。

彼女には先日“猫”の話をしたはずなのに、何故そんな態度を取るのか。不思議で仕方が無い。

「別に、こっちも今から帰るとこよ。邪魔とかそういうの、無いし。」

「え?」

「七海君、今日はここで良いわ。お疲れ様。」

「ええ?!」

あっさりとセッテを帰そうとする佳乃に、驚いたのは香里だ。
だがセッテの方も一礼して、「ほな、お先失礼します!」と、苦笑しながら歩き出しているではないか。
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