secret name ~猫と私~
香里は軽快に去っていくセッテの背中を見つめた。
人目を引く姿勢のよい背中が、あっという間に人混みに紛れていく。

親密な雰囲気に見えたのに、あっさりすぎるのではないか。

「何処に行く?」

セッテの背中を一緒に見送っていたはずの佳乃が、顔だけ向いて香里に尋ねる。
その表情は、さっきまでの柔らかい佳乃ではなく、いつもの凛とした佳乃だ。
香里はぼんやりしていたのか、少々焦って返事を考えた。

「じゃ・・・じゃあ、この近くのバーにでも・・・」

「OK.」

このあたりの地理に不慣れな香里を先導しようと、佳乃は先にスタスタと歩き出す。
2人の関係に釈然としない気持ちを抱えながらも、置いていかれてはぐれるのは困るので、香里はそのあとを慌てて追いかけて行った。


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