secret name ~猫と私~
静かな帰り道。

ふわふわと、気持ちよく酔っている感覚。

隣に空いた、空間。

いつもはセッテが居た。
どんなに遅くても、彼が隣に居たのに。

(今日の私、どうかしてる。)

そんな些細なことを寂しく思うなんて、今までの自分には無かった。
いつの間にか、大きくなっていた彼の存在。
マンションに着いて、ただいまと言っても、誰からも返事は帰ってこない。
セッテが一緒に居れば、隣から『お帰りなさい』と、聞こえてくるのだが。

「あー・・・もう!」

ソファーにバッグを投げ出し、どさっと座る。
少し酔いのまわった頭がぐらぐらしたが、天井を見上げて目を閉じれば、少し良くなった。

(気付かなければ、良かった。)

こんなにセッテの事ばかり考えるのは、気付いてしまったからだ。
香里に会わなければ、彼女と飲みになど行かなければ、こんな事にはならなかったに違いない。

< 122 / 259 >

この作品をシェア

pagetop