secret name ~猫と私~
今日は昨日のトラブル処理のためにいつもより早く出社したので、辺りには誰もいない。
昨日セッテが帰宅するときに伝えたら、快く承諾してくれたので、彼もいつもより少し早めにマンションに来てくれた。

セッテのあんなに動揺した姿を誰かが見れば、たちまち噂になってしまうに違いない。
かくいう佳乃も、どうしてノーヴェ一人であそこまでセッテが動揺するのかが分からなかった。

(ほんと、どうしたのかしら。)

今朝、佳乃のマンションに来た時から、少し様子はおかしかったような気がしないでもない。
なんとなくなのだが、いつもと違うような気はしていた。

そう、“ような気が”だ。

いつも通りを装って上手に隠していたから、きっと以前の佳乃なら気付かなかっただろう。
笑顔なのに弾まない会話に、違和感があったのだ。
それだけ、佳乃はセッテを見ていた。

デスクに着いて、パソコンを立ち上げる。
ノーヴェが直してくれたのであろうサーバーは、きちんと使えるようになっていた。
これで、今日一日仕事が出来る。

(社長・・・なんでこう、大事なものばかり壊れるのよ・・・)

昨日は本当に困った。
各部署、今日は関連業者にお詫びの連絡を入れなければならない。
意を決して開いた佳乃のメールボックスにも、たくさんの業務連絡がたまってしまっていた。

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