secret name ~猫と私~
これ以上は聞かないでくれと、セッテの背中は語っている。
気のすむままに聞きたくても、困らせるのは本意ではない。
わがままを言って、無理やり聞き出したとしても、距離は縮まらないから。

(きっと、ただの同僚じゃない。)

セッテとノーヴェの間に、何かしらあった事は確かだ。
それが何かはわからないが、あまり良い事ではなさそうである。
顔も似ていないので兄弟の線は薄そうだが、似ていない兄弟など珍しくはないので、わからない。

佳乃はそれ以上何も聞けず、午後の仕事に戻って行った。
周りの社員たちも、昨日のトラブルのせいで、今日は慌ただしい。

部署までの短い道のり。
目の前を歩く広い背中が、いつもより遠く感じた。

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