secret name ~猫と私~
だがそれでは、佳乃の想いはずっと秘めたまま、一緒に仕事をしなければいけなくなる。
それは、辛い。
方法として、どちらが自分にとって正解なのか、分からなかった。

「うん。ああ、そうだ!」

社長から目線をそらした佳乃の気持ちを汲まず、彼は思い出したようにセッテに話しかけた。

「そういえば、水口から聞いたんだけどさ・・・」

友人の話をするかのごとく、簡単に名前を呼ぶ。
どうやら社長は相当、“㈱gatto”代表の水口と親しいらしい。
セッテに対しても、後輩に接するかのように話しかけていて、楽しそうだ。

しかし。


「君たち、付き合ってるんだって?」


嬉しそうに話す、社長の声が遠く聞こえた。
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