secret name ~猫と私~
誰か、など。

聞かなくても、分かってしまった。
不安は、的中。

ぼんやりとしていたところに、ガツンと頭を殴られたような。
そんな衝撃が、佳乃を襲う。
プライドを捨てて、部屋を飛び出したり耳を塞ぐことが出来たら、どんなに楽になれるだろう。
かろうじて傍観者を気取って立っているのが、精一杯だ。

「ノーヴェは君に、僕の事を話すのかい?」

やはり、彼女のことだった。

「いえ・・・どんなに親しくても、お互いの仕事の話はタブーなんですわ。」

「そうなのか。ほんと、君達は秘密が多いね。」

和やかな会話の中、佳乃だけが取り残されている。

一刻も早く、この場を去りたい。
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