secret name ~猫と私~
せっかく恋に気付けたのに、こんな形で終わりを告げるなんて思ってもみなかった。
この恋が終わるのは、セッテの契約が終わって、自分の気持ちを伝えてからと・・・そう、思っていたのに。

「高村君は、知っていたかい?」

「・・・いえ・・・」

努めて興味の無いふりをしているが、動揺がバレていないだろうか。

「俺ら、プライベートな話するん、許されとらんのです。社長さんはリーダーから聞いて、知っとるみたいやからええですけど。」

「また、規則か。規則規則と、水口もやっかいなものを作ったものだね。」

悲しそうに笑った社長の顔は、佳乃の目に入らない。

頭の中は、セッテとノーヴェの事実だけが、ぐるぐると回る。

「そうやないと、仕事にならんこともあります。」

仕事熱心なセッテも好きだったが、今だけはそんな言葉を聞きたくない。

「それもそうか。君、モテるだろうから、アレがないと皆君に恋をしてしまうだろうね。」

「はは。モテるかは分かりませんけど・・・」

苦笑混じりの社長とセッテ。

あの規則があっても、恋をしてしまう。
それだけの魅力が、セッテにはあった。

ぎゅ・・・と、知らないうちに拳を握ってしまっていたらしい。
気付いたら爪が食い込んで、手を開けばあとになってしまっていた。
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