secret name ~猫と私~
エレベーターが止まり、佳乃は降りた。
誰もいないマンションの廊下を、一人無言で歩く。
自宅の前について、バッグのいつものポケットから鍵を出してさせば、しんとしたマンションの廊下に響き、妙に耳に残った。

いつもなら、隣に話せる人がいるのに。
今日はそれがないからか。


「ただいま。」


声をかけても、当然、誰もいない。
肩がぶつかりそうなほどの広さの玄関に、男物の革靴が並ぶこともない。

セッテの声を思い出して、また悲しくなった。
おかえり、の声を聞きたい。
こんなに寂しい帰宅は、初めてだった。

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