secret name ～猫と私～

涙を我慢していたら、鼻の奥がつんと痛んだ。

（仕事だから、そばに居てくれる。仕事だから、優しい言葉をくれる。）

ミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、乱暴に冷蔵庫を閉める。
中できれいに並んでいる調味料の瓶が、閉まった拍子にカチャンと鳴るのが聞こえた。
それを無視してベッドへ向かい、冷たいシーツに勢いよくうつぶせで飛び込んだ。
数十秒ほどそのままの体勢で目を閉じてから、仰向けに向き直って天井を仰ぐ。
手の中のペットボトルが、冷たくて気持ちがいい。
目を閉じたら寝てしまいそうだったから、のそのそとベッドのふちに座り直した。
ペットボトルのふたを開けて、水分だらけの胃に流し込む。
もう片方の手に握られた手紙をもう一度開いて、サイドテーブルにペットボトルと一緒に並べて置いた。

彼の全てが、仕事と規則で縛られている。
“佳乃のサポート”という、仕事で。
この手紙も、仕事の一環なのだろう。