secret name ~猫と私~
前を向いて歩きながらも、セッテの表情を盗み見れば、見たことも無いような柔らかい眼差しをしていた。

自分から始めてしまった話題を、勝手に切り上げるのも後味が悪いと思い、苦しい胸の内を隠しながら、佳乃は話を続ける。

「ええ・・・いつもそうなの?」

「まぁ、ずっとあんな感じやで。」

苦笑しながらも、本当に困っているようには見受けられない。

「彼女が、前に少し話していた、機械が得意な猫?」

幸せそうな彼から、目をそらした。
前を向いて歩くふりをすれば、顔を見なくて済む。

「あいつ異常なぐらい、機械大好きやねん。こないだ乗っとったバイクも、自分でいじっとるしな。」

“機械”ならば、何でも触るようだ。
まさかあの大型のバイクまで、自分でいじっているとは思わなかった。
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