secret name ~猫と私~
彼の言葉の端々から伝わってくる、ノーヴェへの想い。
駅で電車を待ちながら、不意に出た言葉。

「好き、なのね・・・」

何が、とか。
誰が、とかは、あえて言わずにおいた。
セッテの方は見ずに、ただそれだけが口をついて出る。
彼は今どんな顔をしているのだろうか。
きっと、目を丸くして、質問の意味をかみ砕いているに違いない。

「せやな。好きやで。」

その言葉は、決して自分に向けて言われたものではない。
分かっているはずなのに。

(私も、貴方が好き。)

伝えられない想い。

「今年、結婚するんや。」

電車の音にかき消されてしまえばいいのに、セッテの言葉は、佳乃の耳に届いた。

「あかん、俺めっちゃ規則やぶっとるわ~。」

高村さん内緒にしとって?と苦笑しながら、セッテは照れ臭そうにしている。
< 201 / 259 >

この作品をシェア

pagetop