secret name ~猫と私~
「高村さん。」
街灯で星の見えない帰り道。
自宅へと向かうその背中を呼び止める。
「何?」
人気の無い道で、2人の声が響く。
足を止めた佳乃は振り向かなかったから、セッテは彼女の前にまわって、真っ直ぐ目を合わせた。
「俺、何で解約やねん。」
せっかく顔が見えたのに、佳乃は目を合わせてくれない。
「ほんまの事、言うてや。せやないと納得できへんねん。」
佳乃のバッグを持つ手に、力が入ったのが分かった。
彼女はうつむいたまま、決してセッテと目を合わそうとはしない。
「俺に悪いところがあったとか、なんかしたとか、あるんやろ?」
女々しいと分かっていても、聞かずにはいられない。
解約の理由いかんで、今後の自分の仕事にも関係してくるかもしれないのだ。
悪いところがあるのならば、直さなければ。