secret name ~猫と私~
しばらくの無言のあと、意を決したように、佳乃はセッテと目を合わせた。

「悪いところなんて、無い。何もされて、無いわ。」

佳乃は静かに小さく首を横にふり、きちんと否定をする。

「せやったら、何で・・・」

何もないなら、解約なんていう発言を撤回してほしい。
そう続けたかったのに、うまく言い出せなかった。

まだ肌に冷たい夜風が、ふわりと春の香りを運んで、二人の髪をわずかに揺らす。



「貴方を、好きになってしまったから。」



潤んだ瞳で見つめられて、セッテは言葉に詰まった。

思考がまともに働かない。
恐れていた事が、本当になってしまった。

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