secret name ~猫と私~
出勤時と同様電車に乗って、事務所の最寄りの普通電車しか停まらない小さな駅で降り、駐輪場に停めてあった自分の自転車にまたがった。

途中コンビニに寄って、ビールの6缶パックを買い、ジンジャーエールもかごに入れる。
ビールとジンジャーエールがあれば、カクテルのシャンディ・ガフが作れる。
ノーヴェはシャンディ・ガフが好きだから、平日は飲まないと決めている彼女も、1杯ぐらいは付き合ってくれるかもしれない。

(・・・そ、か。俺、明日休みやんな・・・)

会計を済ませて外に出て、再び自転車にまたがる。
漕ぎだせば、風が気持ちの良い季節だ。
ママチャリではなくてマウンテンバイクだから、ハンドルに引っかけたビールが少し邪魔だったが、数分で寮に着いた。

寮の室内駐輪場に、今日はノーヴェが居ない。
いつもならセッテが声をかけるまで、時間を忘れて黒いバイクをいじっているというのに、今日に限って。

(なんや・・・ついてへんな。)

溜め息を吐きだして、駐輪場を後にする。
彼女の部屋に行けばいるだろうから、とにかくシャワーを浴びてから着替え、夕飯を食べよう。
荷物を持ったままだが、事務所にも寄って代表に説明もしなければいけない。

明日には契約者から連絡がくるだろうか。
こんなことは初めてなので、戸惑うばかりだ。

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