secret name ~猫と私~
彼女の部屋に着いて、壁にある備え付けの小さなチャイムを押す。

もう、寝てしまっただろうか。
ビールも、ジンジャーエールも、冷えている。
こんな日は一緒に飲もう。

待っていると、カチャ・・・と、ゆっくりドアが開いた。

「おかえり。」

いつもの無表情が、懐かしい。

「ただいま。」

一緒に飲もうと誘ってジンジャーエールを見せれば、小さく頷く。

自分の部屋とは違って、ノーヴェの部屋は物が多い。
短い廊下に平然とバイクのマフラーが置いてあったり、ベッドの足元に大きな工具箱があったりするが、それも2年という月日で慣れた。
あまり整頓も得意ではない彼女なので、時々セッテが片付けたりもする。
しかし、何故か工具箱の中だけはとてもきちんと整理されており、他人に触られる事も嫌がった。

部屋に入れてもらって、ベッドに腰掛ける。
枕元にはバイク雑誌と地図が置いてあったから、ツーリングの計画でもたてているのかもしれない。


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