secret name ~猫と私~
大型バイクが似合わない、華奢な身体。
それなのに、ノーヴェはバイクに乗ると、一人で何処へでも行ってしまう。
万が一車体が転んだらどうするのかと聞いたことがあるが、コツさえ掴めれば簡単に起こせると言われた。

セッテ自身も一応自動二輪の免許持っているが、彼女ほど乗らないし、今は自分のバイクが無いので、ペーパードライバーに近いかもしれない。
倒れたバイクだって、力任せに起こせてしまうので、コツなど必要無かった。

彼女は、自由だ。
誰にも縛られないし、縛らない。

それは恋人であるセッテでさえも。
初めて出会ったときは、彼女の不健康そうな顔色と四肢を見て、ほおっておけないと感じた。

追いかけられもせず、追いかけもせず。

いつの間にか自然とそばにいて、お節介とは思いつつも、ついつい世話を焼いてしまう。
それをノーヴェはされるがままに受け入れ、セッテはそれが居心地良く感じ、気が付いたら離れ難くなっていた。
その気持ちが一方通行ではないと知ったときのあの喜びは、2年経った今でも忘れることが出来ない。

世話は焼きたいが、束縛されると逃げたくなる。
浮気は許せないが、束縛はしたくない。
時々は一人の時間も欲しいので、そういう時は黙って一人にさせてほしい。

実際の自分は面倒な男だと、セッテは自嘲する。
“完璧なサポーター”を演じる自分からは、佳乃だって想像しないだろう。



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