secret name ~猫と私~
グラスを2つとマドラーを持ってきて、ノーヴェはセッテに渡されたビールを注ぐ。
彼には、ビールを。
自分には、シャンディ・ガフを。

差し出されたグラスを受け取り、小さく乾杯をする。
一気に半分ほど飲みほして、セッテは深呼吸をした。

「あんな・・・。」

どうやって、話そうか。

「俺、明日休みやねん。」

ノーヴェは頷く。

「今日な、会社で告られたわ。」

何か反応があるだろうか。
少し期待したが、やはりノーヴェは頷くだけだった。

「恋人居る言うた後に、言われてな。」

ひとり言のように続ける。

「何か見返りを求められたりはせんかったけど・・・。」


「嬉しかった?」


「え?」

二杯目のシャンディ・ガフを作りながら、なんでも無い事のようにノーヴェは言った。
セッテは目を丸くして、彼女の次の言葉を待つ。

「誰かが自分を好きになってくれるのって、嬉しい。」

違うの?と、小首をかしげながら。

嬉しいかなど、考えていなかった。
とっさにありがとうとは言えたものの、驚いたのと、自分の仕事に自信を失くしたので、手いっぱいだった。

「せや・・・な。嬉しい、かな。」

「うん。」

誰だって好意を寄せられたら、嬉しいものだとノーヴェは思う。
それがたとえ“猫”としての自分であったとしても。


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