secret name ~猫と私~
もう、恋は出来ないだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
今までなら、“そんなものは仕事の邪魔だ”と一蹴してきたが、今は違うような気がした。
自分の弱さを受け入れ、支えてくれる人に出会いたい。
そしてその人を自分も支え、お互いに成長しあえる関係になりたい。
そう思えるようになっている。
(彼の、お陰なのかな・・・)
思い出にするには、新し過ぎる記憶。
脳裏にはまだ鮮明に、彼の笑顔が蘇る。
「高村課長、この案件ですが、お目通しお願いします。」
呼ばれて顔を上げれば、部下がデスクの横に来ていた。
渡された資料を受け取り、自然に笑顔を向ける。
「わかったわ。ありがとう。」
あれから佳乃は、自分でもわかるぐらいに、柔らかくなった。