secret name ~猫と私~
そんな、ある朝。
いつも通り出社しようと、会社のビルの前まで来た佳乃の前に、一台のバイクが立ちはだかる。
見覚えのある黒い車体は、良い具合に年季が入っているのに、愛情を感じられた。
だが、今の佳乃には会いたくない人。
「ノーヴェさん・・・」
まだ心の中にくすぶり続ける彼の、恋人。
いきなりヘルメットを手渡され、落としてはいけないととっさに手を出す。
社長室の無口な彼女は、自身はヘルメットをかぶったまま、佳乃に話しかけた。
「乗ってください。」
思わず目が点になった佳乃をよそに、ノーヴェはジャケットとグローブも手渡してくる。
転倒時に怪我を減らせるように、肩や背中にパットが入ったライダースジャケットなので、見た目よりも重かった。
「乗ってって・・・今から出勤よ?」
「社長には言った。早く。セッテ、今日からどっか行く。」
どこかへ行くとは、またあいまいな表現だが、きっと知らされていないのだろう。
猫同士は仕事の話をしないのだと、前に聞いた気がする。
いつも通り出社しようと、会社のビルの前まで来た佳乃の前に、一台のバイクが立ちはだかる。
見覚えのある黒い車体は、良い具合に年季が入っているのに、愛情を感じられた。
だが、今の佳乃には会いたくない人。
「ノーヴェさん・・・」
まだ心の中にくすぶり続ける彼の、恋人。
いきなりヘルメットを手渡され、落としてはいけないととっさに手を出す。
社長室の無口な彼女は、自身はヘルメットをかぶったまま、佳乃に話しかけた。
「乗ってください。」
思わず目が点になった佳乃をよそに、ノーヴェはジャケットとグローブも手渡してくる。
転倒時に怪我を減らせるように、肩や背中にパットが入ったライダースジャケットなので、見た目よりも重かった。
「乗ってって・・・今から出勤よ?」
「社長には言った。早く。セッテ、今日からどっか行く。」
どこかへ行くとは、またあいまいな表現だが、きっと知らされていないのだろう。
猫同士は仕事の話をしないのだと、前に聞いた気がする。