secret name ~猫と私~
特別寂しいとも思わない。
仕事が恋人だ、一生添い遂げてもいい。

そう思っていた。

だが、親は違う。


「よっちゃん、もう35だもんでね・・・そろそろ結婚しりんよ?」


母親が寄越す電話の締め括りは、いつもこれだ。
変わるのは年齢のところぐらいか。

大学の時に上京した佳乃だが、社会人になってからは年に一度、盆か正月に実家に帰るか帰らないかだった。
しかし、帰るたびに“結婚”の文字を出してくる母親が、正直うっとうしくて、最近は帰りたくないとさえ思ってしまう。

弟は結婚し、すでに孫が居るのだからいいのではないかと言っても、『息子の孫は、お嫁さんの子だから』と言われ、やはり結婚しろ、早く子供を産んでくれと言ってくる。

自然と遠のいた実家からは時折、見合いの写真まで届く始末。
恋人を作る気は、今の佳乃には無いのに。

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