secret name ~猫と私~
セッテにとっては、きっと何でも無い一言なのだ。
でも佳乃にとっては、衝撃の一言だった。

「そういうセリフ、恥ずかしくないの?」

顔をそむけ、ぶっきらぼうに言えば、頭をくしゃりとなでられた。
驚いて思わず顔を向ければ、悪戯が成功した子供の様な顔をしたセッテが居た。

「恥ずかしいの、ジブンやろ。顔真っ赤やで。」

慌ててそっぽを向くと、また楽しそうな笑い声が頭の少し上から聞こえてくる。

「ほんま可愛いわ~!」

「う、うるさいわね!可愛くなんてないわよ!!」

からかわれていると分かっていても、顔は勝手に熱を帯びていくし、早鐘を打つ鼓動は収まらない。
むしろ、どんどん速くなっていく。

可愛い、だなんて。
子供の頃にだって、ほとんど言われた事はない気がする。
いつだって、“しっかりしてるね”とか、“何でも一人で出来るね”とか。
昔の恋人にだって、そんな台詞を言ってくれた事はない。
それを、出会って1ヶ月も経たない異性に言われるなんて。
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