secret name ~猫と私~
彼を置いていこうとするぐらいの速足で、佳乃は歩いて行く。

「ちょ・・・高村さん!怒ったん?!」

数歩前の佳乃の後を、慌ててセッテが追いかける。

「怒ってない。」
「ウソや!怒っとるやん!!」
「怒ってない!!」

謝りながら着いてくるセッテに、ほんの少し優越感を感じる。
年上をからかった罰だ。
……それにしては子供のようだと、自分でも思ってはいるが。

(本当に、怒っていないのに。)

怒っているわけではなく、ただ恥ずかしいだけだ。
振り向けば困った顔をしたセッテが居て、それがなんだか嬉しくて、再び背を向けて歩き出した佳乃は、こっそりほほ笑んだ。

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