secret name ~猫と私~
社長も、今日は猫を連れていない。
外出するときは連れて行かないと、決めているのだろうか。

少し休憩を取る為に部下に一言告げてから、にぎわう会場から控室に移り、佳乃は通り道にあった自動販売機で買った缶コーヒーを空けた。

糖分が欲しかったので、甘いカフェオレを一気に飲み干すと、そのまま缶を捨てにドアを開ける。

「え?」

「?」

ドアを開けると、ちょうど入ろうとしていた人が居たらしく、はち合わせた。
それは先日見た顔で、先程少しだけ気になった人。
社長の近くにいないので、今日は居ないものだと思っていた。

「えっと・・・ノーヴェさん・・・?」

ノーヴェは小さくうなずき、佳乃に道をあけた。

「ありがとう。」

佳乃の言葉に、ノーヴェはまた小さくうなずく。
染めのなさそうな短めの髪が、その度に肩の辺りでさらりと揺れた。


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