secret name ~猫と私~
しばらくの近況報告の後、会話が止まり、美穂が何気なく口を開いた。

「そういえば、香里は子供まだなの?」

「まだまだ。っていうか、このまま仕事続けたいから、子供はいいかなぁ・・・」

「そんなこと言って。もう私たち35だよ?!タイムリミットだってあるんだから。」

優子の言葉に、実家の母を思い出す。

(お母さんも、同じ事言ってたなぁ・・・)

『あんた、もう35じゃんか。そのまま仕事しとったら、いつのまにか、子供産めん歳になるよ!』

今は高齢出産も増えているが、母ぐらいのころには35歳など、とっくにタイムリミットだったのだろう。
結婚だって、もっと若くにしていたに違いない。

自分には関係なさそうな話を聞きながら、ジョッキを傾け、ビールを飲む。
さっきは美味しく感じたビールが、何故だか苦かった。
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