背中を合わせて【完】
笑う零の顔が今度ははっきりと未夜の目に映った。


未夜の持つ火の消えた花火と新しい花火を交換すると、零はまたライターで火をつける。


終わった花火は零の飲んでいた缶ジュースの中へ。


零が花火を見ながらタバコに火をつけると、未夜に話し始めた。



「俺が家をでて働きながらお金を貯めてるのには、夢があるからなんだ。」



夢を持っていない未夜にとっては、とてもうらやましい夢の話。



「世界中を旅して、世界中の愛の形を伝えたい。それが俺の夢。」


「世界中の愛の形?」


「そう。日本は平和だけど、戦争の中でも愛を育む人もいるんだ。タイでは、自分の親よりも年上の人と結婚すると幸せになるっていうのを聞いたことがある。ストリートチルドレン達が必死に生きるなかでも、愛の形があるんだ。」



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