背中を合わせて【完】
「ちょっと離してよ!!」



突然の出来事に当然のように声を張る。



「いやいや、そんなに邪見にしなくても。ちょっとだけ話さない?まだ時間あるでしょ。」



そう言いながらも男は腕をつかむ力を緩めなかった。



「私に何の用?」



女は長いストレートの髪をなびかせながら男の方へと身体ごと振り向きながら言い放った。


白い肌の女の顔が男と向き合う。


髪と同じ色素の薄い瞳が男のことを睨んでいた。



「話すのが嫌なら、俺のこと気にしないで歌って。」


「あんたに歌を聞かせるつもりもないから。」



男の言葉に冷たい言葉で返す。


まだ離してくれない腕。

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