背中を合わせて【完】
「まだ起きてたのか。」



ボーッとしていたら零がシャワーから出てきた。


濡れた髪をタオルで拭きながら香奈の隣に座ると、シャンプーのいい香りを漂わせてくる。



「ちゃんと髪乾かさないと風邪引くよ。」


「そのうち乾くって。」


「私が乾かしてあげようか?」



いたずらっぽく言った香奈の言葉。


零は冗談と本気、どちらの意味で受け取ったんだろう。



「お姫様のお手を煩わせないように、外の風で乾かしてきますよー。」



そう言って零は家を出ていった。


香奈の心には淋しさが募ることも知らずに。





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