Un chat du bonheur
Felix
act.1
灰色の空から、今にも雨粒が落ちてきそうだ―…
空と同じ灰色の街で、彼女はふと足を止めた。
街角に打ち捨てられた廃材の影で、“猫”を拾った。
色のない街。
その街で、唯一つ輝いていたもの。
『Felix』
重たい瞼をふと開くと、コーヒーのいい香りが鼻腔をくすぐった。
朝。そう感じるよりも早く、開いた眼に強烈な太陽の光が映りこむ。
その眩しさに忌々しさすら覚えつつ、彼女はゆっくりと身体を起こした。
いつの間にベッドに横になったんだろう。
そう考え至る前に、隣に感じる暖かな感触に視線をさ迷わせる。
とくん、と心臓が高鳴った。
目に飛び込んできたのは、毛布に殆ど埋もれるようにして潜り込んでいる男。
毛布とシーツの隙間から、綺麗な金色の“毛並み”が覗いていた。
そして思い出す、昨日のこと。
―…そう、“猫”を拾った。
彼女はそこまで考え至り、のそりとベッドから這い出た。
自分で入れたものではないコーヒーを注ぐと、それにゆっくりと口をつけながら彼を観察する。
規則正しい寝息。
どうやら彼が淹れたらしいコーヒー。
少しだけ薄いその味が、何故か切ない。
空と同じ灰色の街で、彼女はふと足を止めた。
街角に打ち捨てられた廃材の影で、“猫”を拾った。
色のない街。
その街で、唯一つ輝いていたもの。
『Felix』
重たい瞼をふと開くと、コーヒーのいい香りが鼻腔をくすぐった。
朝。そう感じるよりも早く、開いた眼に強烈な太陽の光が映りこむ。
その眩しさに忌々しさすら覚えつつ、彼女はゆっくりと身体を起こした。
いつの間にベッドに横になったんだろう。
そう考え至る前に、隣に感じる暖かな感触に視線をさ迷わせる。
とくん、と心臓が高鳴った。
目に飛び込んできたのは、毛布に殆ど埋もれるようにして潜り込んでいる男。
毛布とシーツの隙間から、綺麗な金色の“毛並み”が覗いていた。
そして思い出す、昨日のこと。
―…そう、“猫”を拾った。
彼女はそこまで考え至り、のそりとベッドから這い出た。
自分で入れたものではないコーヒーを注ぐと、それにゆっくりと口をつけながら彼を観察する。
規則正しい寝息。
どうやら彼が淹れたらしいコーヒー。
少しだけ薄いその味が、何故か切ない。