Un chat du bonheur
酷く重たい身体を起こすと、ベッドサイドで丸まったまま、死んだように眠っているフェリクスが目に入った。
何故隣にいないんだろう、とレアは不思議に思ったのだが、カラカラに喉が渇いていることに気がついてふらりと立ち上がった。
「あたま、いたい…」
レアの声は掠れて、疑いようもなく熱があるらしいことだけは理解できた。
「今、何時…?」
時計を見ると、まだ仕事までは時間があった。
この状態で行けるのか解らなかったが、まずは水を飲もうと蛇口をひねる。
コップに注がれた水を飲み干すと、少しだけ気分がよくなった。
結局、帰宅して湯船に浸かっている間に気を失ったらしい、ということだけは理解できた。
レアは再びふらふらと歩き出すと、まずは汗をかいてしまった服を着替えることにした。
―…きっと、フェリクスが着替えさせてくれたのね…。
真っ赤になりながら、と心のなかで付け加えると、笑いがこみ上げてきた。
「…レア?!」
ベッドの辺りで、目が覚めたらしいフェリクスの声が聞こえた。
「ここにいるよ」
まだ少し声が変だったが、それでも先ほどよりもマシな声でレアが答えた。
「まだ起きたらダメだよ、レア…覚えてる?お風呂で気を失ってたんだよ。すごい熱で…」
「覚えてるよ。あなたも、顔が赤かった」
レアが悪戯っぽく笑うと、フェリクスの頬がまた赤くなった。
「それは、レアが…とにかく、もう一度横になってよ」
「わかってるよ」
フェリクスに支えられながら、レアはベッドに戻った。
なかなかベッドに入ってこようとしないフェリクスに、レアは不思議そうに声を掛ける。
「今日は一緒に寝ないの?」
「だって…」