Un chat du bonheur





人通りの少ない街を歩きながら、二人は捨て犬や捨て猫を扱っている施設までやってきた。

ペットショップで買いたくないわけではなかったが、どこか自分たちと同じような猫を求めていたのかもしれない。


檻にいれられた何匹かの猫の中で、弱々しくないている真っ白い子猫が居た。
フェリクスは施設の人に頼んで、その子猫を抱かせてもらうと微笑んだ。

「レア、こいつかわいい」

「ほんとだ…女の子?男の子?」

「男の子」

フェリクスは一目で気に入ったようだったので、必要な手続きを踏んでその日のうちにその子猫を引き取ることにした。
生まれてすぐに施設に保護されてきた子なのか、特に虐待された後もなく人懐っこい子猫だった。


「ケージとか、餌とか買わないと」

レアが言うと、フェリクスは子猫を抱いたまま頷いた。

「家の近くのペットショップ行こうか」

レアが同意を求める様にフェリクスに視線を移すと、フェリクスはもう一度頷いた。

「じゃあ、そうしよう。もう少しで家つくからなー」

猫にも話しかけつつ、フェリクスは無邪気に微笑んだ。
レアはそんな彼を見つつ微笑むと、歩き出した。


レアもフェリクスも猫を飼うのは初めてだったので、色々な注意事項をペットショップの店員にきいたりしているうちにすっかり昼時を過ぎてしまっていた。
猫を抱いたままでは飲食店には当然入れないので、少し遅くなるがアパートに戻ってから食事を取る事にした。

アパートに着くと、連れ歩いて疲れてしまった猫をケージに入れて寝かせてやる。

それが済むと、二人で並んで昼ごはんの準備に取り掛かった。


眠る子猫を見つめつつ、二人で向かい合って食事を取る。
元々二人だと狭いアパートが、子猫のケージをいれたことによってまた少し狭くなった。

だが、それは決して嫌なことではないのだ。

暖かい、どこかくすぐったいような満足感。
そんなものがレアの心を暖かくした。


「そういえば、名前決めてるって言ってたよね」

レアが尋ねると、フェリクスはにやりと笑って子猫を見た。
レアはそれに少し嫌な予感を覚えつつ、同じ様に猫を見つめた。

「…こいつの名前は、フェリクス」

「……」
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