Un chat du bonheur
アパートについて、いつも二人が使っている部屋とは別の部屋にブリジットの荷物を入れると、レアとブリジットは最近の近況を語り合っているようだった。
リュックはそんな二人の話を聞きながら、構ってもらえず拗ねているフェリクスの相手をしていた。

子猫は愛情が欲しくてたまらないのか、レアの気を引こうと必死ににゃあにゃあと鳴いていた。
リュックは苦笑してそれを見つめながら、ベッドの上に座ってねこじゃらしを左右に振る。

レアが構ってくれない事を悟ったフェリクスは、諦めた様にすぐにねこじゃらしにじゃれはじめた。

「でも、レアったら…こんな素敵な人と一緒に住んでるなんて。私びっくりよ」

「色々あって…」

「もう付き合って長いの?」

ブリジットにとっては、恐らく何気ない一言だったのだろう。
ただ、レアは考える。
これは、果たして付き合っているといえるのか、と。


確かに、同じ屋根の下で生活はしている。
でも、お互いを恋人同士の様に扱っているかというとそれは違うような気がするし、そもそもこの生活が始まった理由も普通ではない。
普通の恋人同士の様な…そういう行為が二人の間にあるわけでもなく、夜は二人で同じベッドで眠ることはあっても、それが恋人同士の行為に及ぶ事はないのだ。

問われて初めて、色々な疑問符が浮かんでくる。

自分たちの関係は一体、言葉にすればなんというものなのか、と。



「…レア?」

急に黙り込んでしまったレアを気遣う様に、ブリジットが顔を覗き込んできた。
レアは我に返ると、心配させまいと微笑んだ。


「…あぁ、ごめんブリジット。少し考え事してた。私たち、確かに一緒に住んでいるけど…そういうんじゃないの」

それ以外どう答えていいかわからず、レアはそう言うしか出来なかった。
背後に居るリュックの表情は、何故か見ることは出来なかった。

「そうなんだ…じゃあ、レア。私本当はね、レアにあって欲しい人がいるから来たのよ」

唐突なブリジットの言葉に、レアは何事かと目を見開く。
ブリジットは尚も言葉を続けていく。

「あのね、レア。リュックさんが恋人かどうか確かめたかったの。あなた覚えてるかな、昔近所に住んでいた男の子…」

「え…?」

レアは何の事かと記憶の蓋を開く。
あの田舎町で、年の近い男の子なんて限られている。


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