Un chat du bonheur
「えーっと、ダミアン…?アルのことかな…それとも…」

かつての幼馴染たちの名前を列挙しつつ、レアは必死に思い出そうとした。
ブリジットは可笑しそうに笑うと、首を横に振った。

「あなたに会わせたいのは、クレールだよ」

その名前には確かに聞き覚えがあった。
昔、ブリジットや他の幼馴染たちと一緒によく遊んだ子の名前だ。

赤毛が印象的な、どこか儚い男の子。

そこまで思い出して、更に疑問符が浮かぶ。
何故ブリジットは、自分に彼を会わせたいのか。

「えっと、クレールに?会うの?」

疑問がそのまま口をついて出る。
ブリジットは期待に満ちた瞳で頷くと、微笑んだ。

「だって、今あなたアルバイトで生活しているんでしょう?彼とこの前会ってね、レアの事話したら久しぶりに会いたいって言ってて。ねぇ、今恋人いないんでしょう?会ってみたら?」

そういわれて、困ってしまった。
今レアは、特別恋人が欲しいというわけでもない。
まして、幼馴染とはいえ、もう何年も会っていないクレールに唐突に会えと言われても、正直その実感がわかないというのが正直な気持ちだった。


「でも、私…実家には帰らないし」

「まどろっこしいなぁ、レアは。クレール、こっちに出てきてるのよ」

なるほど、とレアは心の中で呟いた。
どうやらブリジットは、レアにクレールを会わせる為だけにこの街に出てきたようだ。

「会うのはいいけど…多分、ブリジットの想像しているような事にはならないと思うけど…」

「本当?じゃあ、そうクレールに伝えてあげなきゃ!電話借りるわね!」

ブリジットは嬉しそうに言うと、電話の方へ駆けていった。
レアはそれを見つめながら、小さな溜息を付く。

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