Un chat du bonheur
「にゃあ」
フェリクスが小さな声で鳴いた。
まるで、誰かを探しているかの様な。
レアは殆ど無意識に立ち上がると、ふらふらとその後を追った。
「フェリクス…お前こんなところでどうしたんだよ」
唐突に聞こえた声に、レアの身体がびくりと震えた。
まさか…そんな想いが心を支配する。
瓦礫の奥を、恐る恐る覗き込むと、今にも崩れそうな建物の影にその人は、居た。
「リュック…」
安堵した声が出たのは、もう一度彼に会えた安心からなのか、なんなのか。
レアの頬に、もう一度涙が流れた。
「レア?!」
驚いた声を出したのは、リュックだった。
左手でフェリクスを抱き上げながら、レアを雨の当たらない廃墟の下に招き入れる。
冷たい風と雨ですっかり冷えてしまったレアの身体を、濡れるのも厭わずに変わらずに抱きしめてくれる。
レアは小さく息をつくと、どうしていいかわからずにリュックを見上げた。
「どうして、ここに?」
「あなたが…いなかったから…」
レアの言葉に、リュックは困った様に笑った。
「レアの傍に居ちゃいけないんだと、思って」
「ちが…うの」
寒さなのか恐怖なのか、よくわからない感情のせいでレアの顔は歪んだ。
「私…違うの…。わかったの!私、あなたのこと…!」
感情が先走って、うまく言葉に出来ないことがもどかしい。
この気持ちが、言葉にしなくても伝わればいいのにとレアは思った。
「…ごめんね、レア。ごめんね」
リュックは悲しそうに笑いながら、帰ろうと言った。