Un chat du bonheur

家に帰ると、レアはまずシャワーを浴びた。
とてつもなく寒かったし、冷え切っていた。リュックはどこにも行かないよ、と言い、フェリクスの身体を丁寧に拭いてやっていた。

シャワーからあがると、ベッドの上でフェリクスが丸まったまま寝息をたてていた。
リュックはそれを見つめながら、レアがあがってきたのに気がついてカップを差し出した。


「コーヒー。あったまるよ」

微笑む顔は、いつもの彼のものだった。
レアはそれに安堵しつつ、カップを受け取った。

「寝ちゃったね」

「こいつ寂しかったみたい…ずっと離れないんだもん」

「うん…」

私もだよ、と言うのはやめた。
まずは、伝えなくてはいけない言葉がある。


「リュック…話を、聞いて欲しいの」

心臓がどきどきと音を立てている。
鼓動がおさまらなくて、レアは一度深呼吸をした。

「私ね…私…。わかったことがあるの」

唇をぎゅっと結んでいないと、涙が溢れそうだった。
この先を紡げば、今度こそ本当に彼は行ってしまうかもしれない。
それはたまらなく怖くて痛くて、悲しいけれど。
それでもレアは、本当の気持ちを伝える事を選んだ。

「私、あなたが好き」

自分が思うよりもあっさりと、唇から零れた言葉。
レアの頬は途端に赤く上気したが、真っ直ぐにリュックの瞳を見つめた。


リュックは、驚いた様にレアの事を見つめていた。
その言葉が自分に向けられたものなのだと、理解出来ていないようだった。


レアは沈黙に耐え切れなくなり、もう一度口を開いた。


「昨日クレールに会って、告白された、の…。それで、思ったの。私が本当に一緒にいたいのは誰なの?って。私…あなたに伝えたかった。あなたと一緒にいたい、あなたが好きですって…」

涙は、我慢するつもりだった。
それなのに、堪えようと思えば思うほど涙は止まらなかった。


―…昨日から、もう何度こうして涙を流しただろう。


心が散り散りになってしまいそうで、それでもレアはリュックから目を逸らさなかった。
リュックはやっと気がついたかの様にレアを見つめると、小さな…長い溜息を付いた。

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