Un chat du bonheur
act.3
レアとリュックが二人でやっと落ち着くと、家の電話が激しく鳴った。
普段は殆ど鳴らない電話に、レアが慌てて受話器を取る。
「もしもし?」
電話の相手はブリジットだった。
どうやら、クレールを置いて店を出た事や、ほぼ一日家を空けていたことで心配していたようで色々と小言を言われた。
ただ、事情を説明すると出すぎた真似をしたみたいでごめん、と素直に謝ってもくれた。
ブリジットの荷物は家に置きっぱなしだったので、もう一泊することだし家に誘った。
アパートの玄関を開けて招き入れると、泣きはらした顔のレアにブリジットは驚いていた。
「私、やっぱり今日帰ろうかと思って」
ブリジットが唐突にそう口に出した。
レアとリュックは顔を見合わせてブリジットの事を見つめた。
「私は、レアが幸せならそれでいいの。リュックさんとでも、クレールとでも。前のレアは、すごく寂しそうだったからお節介しちゃったけど…」
そう言ってお茶目に笑うブリジットに救われつつ、二人はブリジットを駅まで送り届けた。
もう一度アパートに戻ると、リュックがフェリクスを抱き上げながらレアに手招きした。
「どうしたの?」
「俺、アルバイトがんばって、お金貯めて、花屋やろうと思うんだ」
「…それって」
リュックの言葉に、レアはじっと耳を傾けた。
リュックははにかんだように微笑むと、腕の中のフェリクスに視線を落とした。
「うん、あの場所―…父さんと母さんの花屋の土地、俺が相続してるから。今はまだ何も手をつけてないけど、いつかまたあそこで花屋をやりたい。それで…その…」
リュックは、そこで少しだけ頬を染めると、レアの瞳をじっと見つめた。
「レアに、一緒にきてほしい」
真っ直ぐな瞳でそう告げられて、レアはまた目尻に涙が溜まっていくのを感じた。