Un chat du bonheur
―…いや、そうじゃない。
「彼」の事を、思い出すのが怖いのだ。
「ふーん…」
フェリクスは小首を傾げると、食材をさっさと暖め始めた。
自分でやらないわけではなく、彼はレアを待っているだけ。
そんな些細な優しさが、たまにとても痛い時がある。
「レア、明日休み?」
「うん」
「じゃあ俺さ、明日レアと散歩したい」
お行儀良くフォークを使いながら、フェリクスが微笑んだ。
散歩なんて、そういえば最近は満足に行っていなかったことを思い出す。
休日に外に出るとすれば、フェリクスに必要なものや生活にどうしても必要なものを買い足すくらいで。
どちらかというと、外出する事を避けていた。
「うー…ん、いいよ…」
「よかった」
フェリクスはもう一度微笑むと、満足そうに頷いていた。