初恋合戦
「行けっつってんだろーが、ええっ?!ガキのくせに深読みしすぎなんだよっ!」

「落ち着け、チナツ」

「イノセは未来がわかるから落ち着いてられるのよ。

この子が国会議事堂に向かう姿でも見えるっていうの?」

「見えてます」

「……」

「だから大丈夫だ」

「大ちゃんって子に……国子って人の息子くんに、

話しかけてやってはどうだ?チナツ」

ゴトウも言った。

二対一では折れざるを得ない。チナツはとりあえず声をかけてみた。

「大ちゃん!」

どこからか声がした。

「えっ?」

さっきのテレパシーの続きだろうか? 少なくとも同じ声がする。

「大ちゃん、ここだよ! つっても抵抗あるかなあ」

「まさか……」

大は声が下のほうからしていることに気がついた。

五歳児より背の低い人間は、この病院にはそうはいない。

大の下といえば世界は限られている。

たとえば、さっき預かった和菓子の包みとか。

「まさかね……」

「遠い目してんじゃないよ五歳児が!

じゃなくて……そうそう、そこだよー。

アンタ勘がいいね。その包みをあけてみな」

びりびり、ぱかっ

「…………」


正真正銘、ただの和菓子だった。生菓子のようなものが、みっつ。

それだけ。

「…………」

大は再び遠い目をした。

お菓子の声が聞こえるなんて、ボクもうおしまいかな。
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