初恋合戦
国子が気の毒なほど悩んでいるので、一芝居打ったのだという。

「あのテレビ生中継、ウソだったの?!」

にやにやと笑いながら、ロケ自体は本物だという。

どういうコネを持っているのかは誰も知らない。

「福江とふたりで、そこの兄弟が来るようにしむけて」

「なにー!?」

「ウチのおかあちゃんのパシリよりいいやろ?

三人寄れば何とやら。国子も心強いかなー、て…」

「初江ちゃん……っ」

スナオに感激する国子。

樫次はぶすっと反論した。

よっぽど悔しかったのだろう。

初江の変装を見破れなかった上に、

福江が前人未踏の変装破りをしたという新情報付きだ。


「福江にも都合が良かったからね」

再びにやり。

「うちの娘、大ちゃんにホレとるからな。」

「盛り上がってるところで悪いんだが……」

咳をはずしていた樫男が戻ってくるなりいった。

「大ちゃんが、病院から抜けだしたみたいだ」

「……っ!」

国子がふらぁっとくずおれたので、大人たちは色んな意味で大騒ぎになった。
< 15 / 28 >

この作品をシェア

pagetop