初恋合戦
ひとつだけ頼みがあるとチナツは言った。

「私達を投げつけたあと、投げたヒトに食べてほしいの。」

節分のマメみたいに。

「地面に落ちたりしてるだろうから、中の苺だけでいいの。

そこが私たちの心臓みたいなものだから。拾って食べてくれると嬉しい」


「わかった。かならずそうするよ。」

だって彼らは教えてくれた。

命を使う上で、大事なのは長生きすることでは無いのだと。

たった一日の命で。

「ありがと。これでわたしたち、あなたたちを通して一緒にいられるわ。」

「だったら、ボクがみっつとも拾おうか?」

「大ちゃん、もしフクエってコとひとつの体を共有してたらどう思う?」

手も一緒、足も一緒、いくら好きでも、ちょっとそれは。

「……あんまり、うれしくないかもね。」

「そういうこと。他人だから会うと楽しいの。」

「あ、でもシオにぃとツグにぃはいつも一緒にいるけどさ、

同じ職場だし兄弟だし。けどそれって関西だから、

ボクだけ離れた場所にいることになるよ?

福ちゃんに食べてもらったほうが近いけど、どうする?」

「……それをすると、元々のジンクスが叶ってしまうおそれがあるわよ」

好きな人に食べさせると――以下省略。

「あ。」
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