初恋合戦
「私もそこは不安なんだけど、

イノセがそれでおっけーだって言うから信じるわ。

……さあ、それじゃ渡して」

ゴトウは、樫男に。

チナツは、樫次に。

イノセは予言の責任をとりたいらしく、大の手に収まった。

ちょっと卑怯かなと思いつつ、気づかれないように背後に迫る。

一発で確実に当てたかったし、たぶん卑怯なほうがバチもあたりやすい。

そうっと、そうっと。

おにはそと、ふくはうち。

――ブンッッッ

「痛……!」

苺大福で息の根が止まりそうになったのは初めてだった。

「ごめん!」

三人とも、妙に感心していた。

(大福って、あんがい飛ぶんだ……)

マトに向かってひたすら謝りつつ、

踏まれないうちにいそいで拾って

砂利まみれになった苺大福の苺を取り出して口に運ぶ。

三人とも、うまくやった。

ただのジンクスなのに、大には妙な確信があった。

投げた瞬間、

『いったんバラけたら……』

イノセたちの声がしたからだ。

チナミはともかく、イノセたちの声はいちどもきいたことがないはずなのに。

――『国会議事堂前集合なっ♪』

――(ちったぁコッチの大変さも考えろや…!)

――『さあて、どうやって東京まで行こうかな?』
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