初恋合戦
関西の、安くておいしい和菓子屋さん。

イノセもチナミもゴトウも、ここで生まれた。

我が子に、名字みたいな名前をつけたくてたまらないお父さんと、

我が子の柔肌を触りたくてたまらないお母さんという、

ちょっと変わった夫婦のもとに。

電話が鳴った。


「はい、安くておいしい和菓子屋さんこと堂本堂でございます」

「おばあちゃん」

「福江かい?まぁわざわざ電話くれたの。東京は愉しんで…」

「テレビ見て。」

「テレビ?」

「知り合いのおばさんが出てるの。」

福江の祖母はテレビをつけた。

初江のいうフリフリアナウンサーが、例の呼びかけをしていた。

「ね。そういうわけで今日の午後三時までに届けてほしいの。苺大福を、ひとつ。」

電話を切ってから、ほんのちょっぴり考えた。

我が子はかわいい。


でも、孫のかわいさには代えられないね。

「樫男―!樫次―!」

おばあちゃんは店員の名かでも下っ端の二人におつかいを命じた。

「あたしらの孫のところまで、この子を連れていってやっておくれ。」

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