鬼姫奇伝
転生しました
その日は、最悪だった。
朝から車に跳ねられそうになり、駅の階段で転び、財布を落としお昼を食べ損ね、見つかったら中身は空。残業で遅くなり、早く帰り弟妹と過ごしたいが為に、駅への近道をと裏道を歩いていたら目の前には、包丁を持った怪しい不審者。
全力で来た道を引き返し、大通りの交番が見えてきた所で誰かが叫ぶ。
ふと、自分の立つ位置に影が出来た。
そこからスローモーションで影が大きくなり上を見た瞬間、目に飛び込んだのは避けられない大きな看板や鉄骨。
何故と思う。
神様は私に恨みでもあんのか。
私はまだやり残した事がたくさんあるのに。
まだ死にたくない。死ねないのに。
襲ってくるだろう衝撃に覚悟し、目をギュッと瞑り身を固くするが、いつまでも無い。目を開けようとした瞬間、薔薇の匂いがし、私の意識は途切れた。