Happy christmas with you
* * *


風呂を終えてリビングに戻ると、そこには…


「…寝てる…?」


ソファーに座って多分睡魔と戦っていたのだろうが、結局は負けて眠っているひなたが目に入る。横になってしまうとその身体の小ささが余計に強調されて見える。


「そんなとこで寝てたら風邪ひくって。」


あどけない寝顔。あまりにも無防備な姿に沸々と抑えられない欲望が込み上げてくるのを感じる。


「…無防備な顔しちゃって…。キス、しちゃうよ?」

「んー…。」


…だめだめ。そういうのは良くない。そう言い聞かせてからひなたに近寄る。


髪だって半分も乾いていない。本当に風邪をひいてしまう。
俺は延長コードを引っ張り出してきて、ドライヤーのコンセントをそこに差す。そしてひなたの身体を完全にソファーの上に寝かせ、頭だけが少しソファーから出るように動かした。


「起こしたらごめん。」


聞こえてないだろうけど一応断って、タオルとドライヤーをそれぞれ手に持ってドライヤーのスイッチを入れた。


ゴーという音の中で、俺はひなたの髪を指ですいた。ふわりと髪から香る匂いがさっきほんのりとお風呂場に残っていたものだと分かる。


「…中学生か、俺は。」


もういい大人だと言うのに、心臓がドクドクいっている。どれだけウブなんだ俺の心臓は、と盛大にツッコミを入れたくなる。


どうやらひなたはかなり熟睡をしているらしい。…疲れているのだから無理もない。倉持さんに聞いた話だと、ほとんど徹夜に近いものだったようだ。キューティブロンドの人気を考えれば、予約のケーキだけで相当数であることは確かだ。それにひなた本人に自覚はないけれど、ひなたは倉持さんの右腕に近いポジションを任される〝パティシエ〟なんだ。倉持さん直々の指示が一番最初に飛んでくるし、ひなたのことだからそれには必死で応えるのだろう。


「無理言ってごめんな、ひなた。」


帰してあげれば良かったと思わないでもない。
でも、やっぱり今日はどうしても君と一緒にいたかった。これは間違いなく俺のワガママだ。

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