Happy christmas with you
大体乾いたため、俺はドライヤーのスイッチを切った。
ひなたはそれでも熟睡だった。


「…さて、運ぼうか。」


ここに寝かせておくわけにはいかない。そう思って膝の下と背中に手を回す。


「っ…。」


手に伝わるのは、ひなたの温もり。そしてその柔らかさだった。コートの上から抱きしめるのとはわけが違う。直にその熱も柔らかさも伝わってきては俺の鼓動を早めていく。


「…やわらか…っ…。」


柔らかくて温かくて、それでいてほんのりといい香りがして。
そんな眩暈のしそうな空気が今、俺を包んでいる。


なんとかベッドの上にひなたを下ろして毛布、そして布団を掛けた。その寝顔をベッドの横に膝をついて眺める。
…あどけなくて可愛い。本当に疲れているみたいだ。


「ん…。」

「…はぁ…。そういう声出さないでくれないかなぁ…ほんと。」


理性がしぶとく残っていることに苛々してしまいそうだ。
でも寝込みを襲うような真似はしたくないし、ひなた相手にはできない。


「俺も寝ようかな。」


眠るひなたの隣にそっと身体を滑り込ませ、暖かい身体をゆっくりと抱きしめる。


「…おやすみ、ひなた。お疲れ様。ケーキ、本当に美味しかったよ。」


ちゅっとわざと音を立てて額にキスを落として、ひなたと向かい合う形で眠る。


…きっと、こんなに幸せなクリスマスイブはない。

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